カニはなぜ横歩きする?前に歩けるカニはいる?脚の仕組みと進化の研究
カニが横歩きする理由を、脚の関節の向き、逃げるときの利点、長崎大学の進化の研究(横歩きは約2億年前に一度だけ進化)から解説。前に歩くカニの存在、タラバガニの動き方、観察のポイントも紹介します。
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カニの多くは横に歩く
「カニ歩き」という言葉があるように、カニといえば横歩きの印象が強い生き物です。磯や砂浜でカニを見つけると、横にすばやく走って岩の隙間に逃げ込んでいく姿をよく目にします。
ただし、すべてのカニが横にしか歩けないわけではありません。前や後ろにも歩ける種類がいることが知られていますし、横歩きの得意なカニでも、向きを変えたり斜めに進んだりすることがあります。「横歩き」はカニの代表的な歩き方ですが、唯一の歩き方ではないと考えておくとよいでしょう。
横歩きしやすい脚のつくり
カニの多くが横に歩くのは、脚の関節のつくりと関係していると考えられています。
人の脚は、ひざが前後に曲がるので、前に歩くのが得意です。一方、多くのカニは、体の左右に脚が並び、関節が主に体の横方向に曲がるつくりになっています。この向きで前に進もうとすると、前後の脚がぶつかりやすく、効率よく進めません。横方向なら、進む側の脚で地面を引き寄せ、反対側の脚で押し出すように動かせるため、すばやく移動できます。
また、多くのカニは甲羅が横に広く平たい形をしています。横向きに進むと、平たい体のまま岩の隙間などに滑り込みやすいという利点もあります。
横歩きは約2億年前に一度だけ生まれた
カニの横歩きがいつ、どのように生まれたのかについて、長崎大学の研究グループが研究成果を発表しています。長崎大学の発表によると、研究グループは50種のカニの歩き方を調べ、そのうち35種を横歩き、15種を前歩きに分類しました。そのうえで、344種のカニの遺伝子の情報をもとにした系統樹と組み合わせて分析しています。
その結果、横歩きは、前に歩く祖先から約2億年前に一度だけ進化し、その後、多くのカニで受け継がれてきたと考えられることが分かったとしています。横歩きを身に付けた時期は、ジュラ紀の大きな環境変化の時期と重なり、カニの仲間が多様に広がって繁栄することに役立った可能性があると説明されています。
| 研究の内容(長崎大学の発表より) | 内容 |
|---|---|
| 調べた歩き方 | 50種(横歩き35種、前歩き15種) |
| 系統の分析 | 344種、10の遺伝子配列 |
| 主な結論 | 横歩きは約2億年前に一度だけ進化した |
| 考えられる利点 | 左右どちらにもすばやく動け、逃げる方向を読まれにくい |
| 発表 | 2026年4月(学術誌 eLife) |
前に歩くカニもいる
長崎大学の研究でも、調べた50種のうち15種は前歩きに分類されています。カニの中には、体の形や暮らし方に合わせて、前後に歩くのが得意な種類もいるのです。
一般に、甲羅が縦に長い種類や、脚がとても細長い種類には、前に歩くものがいると言われます。また、砂に潜るのが得意な種類では、後ろ向きに砂へ潜り込むような動きも見られます。
水族館や磯で観察するときは、歩く方向と向きを変えるときの脚の動きに注目すると、種類ごとの違いが見えてきます。
タラバガニはどう歩く?
食卓でおなじみのタラバガニは、分類上はヤドカリに近い仲間で、ズワイガニなどの「カニ」とは別のグループです。長崎大学の研究はカニの仲間(短尾類)を対象にしたもので、タラバガニの歩き方は別に考える必要があります。
タラバガニの仲間は、横だけでなく、斜めや前方向にも動くと紹介されることがあります。ただし、動き方は種類や海底の状態によって変わるため、一言で決めつけるのは難しいところです。タラバガニがカニとどう違うかはタラバガニは「カニ」ではない?で解説しています。
泳ぐカニもいる
カニの脚は、すむ場所や動き方に合わせて形が異なります。ワタリガニ(ガザミ)は、後ろ脚の先が平たく、オールのように水をかいて泳ぎます。詳しくはワタリガニとは?をご覧ください。
観察するときのポイント
サワガニを観察するときは、図鑑とケース、隠れ場所があると移動の様子を確かめやすくなります。ケースを傾けたり追い回したりせず、自分から動くのを待ちます。
歩く方向や脚の動きは、次の点を見ると比べやすくなります。
- 横・前・斜めのどちらへ進むか
- 向きを変えるとき、どの脚から動かすか
- 逃げるときと、ゆっくり歩くときで動きが違うか
観察場所の決まりを守り、石を動かしたら元に戻します。ハサミに指を近づけず、採集する場合は採集可能な場所か確認してください。

