カニは共食いする?脱皮直後が危ない理由とハサミを縛る訳
カニが仲間を食べることがある理由を、食性と脱皮の仕組みから解説。脱皮直後に殻がやわらかくなる時期の危険、脚を自ら切る「自切」と再生、生簀でハサミを縛る理由、ズワイガニの養殖が進まない背景を紹介します。
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カニは仲間を食べることがある
カニの仲間には、同じ種類の個体を食べる「共食い」が見られることがあります。意外に感じるかもしれませんが、カニに限らず、魚やエビ、昆虫など多くの生き物で見られる行動です。弱った個体や、動けない状態の個体が、ほかの個体に食べられてしまうことがあります。
背景にあるのは、カニの食べ物の幅の広さです。多くのカニは、貝類、ゴカイの仲間、小さな甲殻類、魚、死んだ生き物など、手に入るものをいろいろ食べます。京都府の解説でも、ズワイガニは主に魚類(生きた魚は捕まえられないので、死んで海底に落ちた魚)、クモヒトデ、エビ類、イカ類、ゴカイ類などを食べているとされています。
食べられるものは何でも食べる暮らし方の中で、動けなくなった仲間もえさの一つになってしまうことがある、と考えると理解しやすいでしょう。共食いがどのくらいの頻度で起きるかは、種類、大きさ、すむ場所の混み具合、えさの量、隠れ場所の有無などによって大きく変わります。「カニはいつも仲間を襲う」というわけではありません。自然の海では、脱皮の時期に身を隠したり、すむ深さや場所を大きさごとに分けたりすることで、共食いの危険を減らしていると考えられています。
いちばん危ないのは脱皮の直後
カニの一生で特に無防備になるのが、脱皮の直後です。カニは硬い殻(外骨格)に覆われているため、体を大きくするには古い殻を脱いで、新しい殻に替える必要があります。
脱皮したばかりのカニは、新しい殻がまだやわらかく、ハサミで身を守ることも、速く逃げることも難しい状態です。この時期に、殻の硬いほかの個体に見つかると、襲われる危険が高くなります。そのため、多くのカニは脱皮の前に岩陰や砂の中など、見つかりにくい場所に移ると言われています。
京都府の解説によると、ズワイガニのオスは基本的に年1回、9〜10月ごろに脱皮します。甲羅の幅が5cm以上になると、1回の脱皮でおよそ2cm大きくなります。脱皮して数か月以内の、殻がやわらかいオスは「水ガニ」と呼ばれ、市場でも区別されています。
| 脱皮からの時間 | ズワイガニの呼び名の例(京都府の解説より) | 殻の状態 |
|---|---|---|
| 数か月以内 | 水ガニ | やわらかい |
| 約1年(通常の脱皮後) | モモガニ | 硬くなってきている |
| 最終脱皮から約1年以上 | タテガニ | 硬い |
| 次の脱皮が近い | フタカワ | 古い殻の下に新しい殻ができている |
脱皮で脱いだ殻を食べる行動も、甲殻類ではよく知られています。殻に含まれるカルシウムなどを取り込み、新しい殻を硬くするのに役立てていると考えられています。
飼育で共食いを避けたいときは、個体ごとに分けられるケースと隠れ場所を先に準備します。水温計は、水の温度が室温とどれくらい違うかを確かめる道具になります。
脚を自分で切る「自切」と再生
カニは、敵に脚やハサミをつかまれたときに、付け根の決まった場所から自分で切り離して逃げることがあります。これを「自切」と呼びます。切り離す場所には、体液が大きく流れ出ないようにする仕組みがあると考えられています。
失った脚は、脱皮を重ねることで再生します。京都府の解説でも、ズワイガニの失った脚は何回かの脱皮を繰り返すと元どおりの脚になるとされています。一方で、最終脱皮を終えたカニはそれ以上脱皮しないため、一度落ちた脚は二度と再生しないとも説明されています。
漁獲されるズワイガニには、ハサミや脚が欠けた個体もいます。京都府の解説では、欠損がある割合は20%強とされています。脚の欠損だけでは、残った身の状態までは判断できません。訳あり品の違いは訳ありカニとは何?で紹介しています。
生簀でハサミを縛る理由
鮮魚店や料理店の水槽で、カニのハサミが輪ゴムやテープで縛られていることがあります。京都丹後の販売店・魚政は、活け松葉ガニを元気な状態で届ける梱包方法の一つとして、ハサミをゴムバンドで固定すると説明しています。水槽での管理や輸送など、場面によって扱いは異なります。輪ゴムが付いていることだけで、産地や身入りが保証されるわけではありません。
ズワイガニの養殖が進まない理由
タイやブリ、クルマエビなどは養殖が盛んですが、ズワイガニやタラバガニの養殖物はほとんど出回っていません。その理由として、次のような点が挙げられます。
- 育つまでに時間がかかる:京都府の解説では、ズワイガニは生まれてから親ガニになるまでに約10年かかるとされています。
- 幼生の時期の生き残りが難しい:ふ化した幼生は、プレゾエア、ゾエア、メガロパと姿を変えながら3〜5か月ほど海を漂って暮らし、この間の飼育は難しいと言われています。
- 共食いや傷つけ合い:多くの個体を一緒に育てると、脱皮直後の個体が襲われたり、脚を失ったりしやすい。
- 成長に個体差がある:脱皮の時期や回数に個体差があり、そろって育てるのが難しい。
各地の研究機関では、種苗(稚ガニ)を育てる技術の研究が続けられていますが、食卓に並ぶズワイガニは、今のところ天然の海で育ったものがほとんどです。資源を守るために漁期や漁獲量が細かく決められているのも、そのためです。漁期の仕組みはカニの解禁日と漁期の仕組みで紹介しています。
最終脱皮とカニの一生
ズワイガニは、成熟すると「最終脱皮」を迎え、それ以降は脱皮しなくなります。京都府の解説によると、メスは10回の脱皮を繰り返して11齢期になると産卵を始め、その後は脱皮しません。オスは10齢から13齢まで、どこで最終脱皮するかに個体差があります。甲羅の幅が9cm未満のまま最終脱皮したオスは、それ以上大きくならないとされています。
最終脱皮のあとは、5〜6年ほどで寿命を迎えると説明されています。脱皮を繰り返して大きくなり、最終脱皮のあとは殻を硬くして身を詰めていく――この一生の流れを知っておくと、「水ガニ」「堅ガニ」といった市場の呼び名の意味も分かりやすくなります。詳しくは脱皮したカニはどう変わる?をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 水槽でカニ同士を一緒にしても大丈夫ですか?
A. 種類や大きさ、水槽の広さによりますが、狭い場所に多くのカニを入れると、けんかや共食いが起きやすくなります。観賞用に飼う場合は、隠れ場所を用意し、数を少なくするのが一般的です。
Q2. 脚が欠けたカニは弱っているのですか?
A. 脚が欠けていることだけで、個体が弱っているかどうかは判断できません。漁獲されるズワイガニのハサミや脚に欠損がある割合は、京都府の解説では20%強とされています。残った身の状態や食べられる量は個体ごとに異なります。
Q3. 脱皮した殻はどうなりますか?
A. 甲殻類では、脱いだ殻を食べる行動が知られています。殻に含まれる成分を新しい殻づくりに役立てていると考えられています。


