カニの脱皮とは?仕組み・時期・身入りとの関係と水ガニ・堅ガニの違い
カニはなぜ脱皮するのか、脱皮の流れと時期、ズワイガニの最終脱皮、脱皮後の水ガニ・モモガニ・タテガニ(堅ガニ)の違いを京都府の資料をもとに解説。身入りの見分け方やカニビルの卵、ソフトシェルクラブも紹介します。
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カニはなぜ脱皮するのか
カニの体は、硬い殻(外骨格)で覆われています。この殻は伸び縮みしないので、体を大きくするには、古い殻を脱いで新しい殻に替えなければなりません。これが「脱皮」です。人のように体の内側に骨がある動物とは、成長のしかたがまったく違います。
脱皮の流れは、おおまかに次のとおりです。
- 準備:古い殻の内側に、やわらかい新しい殻がつくられる
- 脱皮:古い殻の後ろ側が割れ、そこから体を後ろ向きに抜け出させる
- ふくらむ:脱皮直後のやわらかいうちに水分を取り込み、体が一回り大きくなる
- 硬くなる:時間をかけて新しい殻が硬くなり、身(筋肉)が殻の中に詰まっていく
脱皮直後は殻がやわらかく、身を守ることも速く逃げることも難しい、カニにとって最も危険な時期です。脱皮の前後は、えさの食べ方や行動も普段とは変わると考えられています。この時期の様子はカニの共食いと脱皮直後の危険でも紹介しています。
ズワイガニの脱皮の時期と回数
食卓になじみのあるズワイガニを例に、脱皮の時期と回数を見てみます。京都府の解説によると、次のような特徴があります。
| 段階 | 脱皮の特徴(京都府の解説より) |
|---|---|
| 浮遊期(幼生) | ふ化後3〜5か月ほど海を漂い、何度か脱皮して姿を変える |
| 稚ガニ | 甲羅の幅3mmほどで海底の暮らしを始める |
| 甲羅の幅5cm未満 | 1年に数回脱皮する |
| 甲羅の幅5cm以上 | 1年に1回脱皮し、1回でおよそ2cm大きくなる |
| オスの脱皮時期 | 基本的に9〜10月ごろ(年1回) |
京都府の別の解説では、生まれてから親ガニになるまでには約10年かかるとされています。冬に私たちが食べる大きなズワイガニは、何度も脱皮を重ねて、長い時間をかけて育ったカニです。
脱皮の時期が遅れたり(脱皮遅延)、ある年の脱皮をしないで翌年に持ち越したり(脱皮休止)する個体もいると説明されています。すべての個体が同じペースで大きくなるわけではありません。
飼育中に脱皮した個体は、別の個体と接触させず、隠れ場所のあるケースで落ち着ける環境を整えます。水温を確認できるようにしておくと、置き場所の変化にも気付きやすくなります。
最終脱皮:ズワイガニはある時から大きくならない
ズワイガニには「最終脱皮」があります。成熟すると最後の脱皮をして、それ以降は脱皮しなくなるのです。
京都府の解説によると、メスは10回の脱皮を繰り返して11齢期になると産卵を始め、その後は脱皮しません。オスは10齢から13齢まで、どの段階で最終脱皮するかに個体差があります。甲羅の幅が9cm未満のまま最終脱皮したオスは、それ以上大きくなりません。最終脱皮のあとは、5〜6年ほどで寿命を迎えるとされています。
水産研究・教育機構の研究では、最終脱皮のあとのオスはハサミが大きくなり、行動が攻撃的になることや、それに関わるホルモンや遺伝子の変化が報告されています。
最終脱皮を終えたカニは、脚を失っても再生しないとも説明されています。脱皮しなくなるので、新しい脚をつくる機会がないためです。
脱皮からの時間と市場での呼び名
脱皮からどのくらい時間がたったかによって、殻の硬さと身の詰まり方が変わります。京都府の解説では、ズワイガニのオスを次のように区別しています。
| 呼び名 | 脱皮からの時間 | 殻と身の状態 |
|---|---|---|
| 水ガニ | 脱皮後数か月以内 | 殻がやわらかく、身に水分が多い |
| モモガニ | 通常の脱皮から約1年 | 殻が硬くなってきている |
| タテガニ | 最終脱皮から約1年以上 | 殻が硬く、身が詰まっている |
| フタカワ | 次の脱皮が近い | 古い殻の下に新しい殻ができている |
「タテガニ」は、一般に「堅ガニ」「硬ガニ」と呼ばれるものに当たります。産地のブランドタグが付く松葉ガニや越前がにの多くは、この殻の硬いオスです。水ガニは地域によって「若松葉ガニ」「ズボガニ」などとも呼ばれ、手ごろな値段で売られます。詳しくは水ガニとは?で紹介しています。
身入りとの関係
脱皮して間もないカニは、殻の大きさに比べて身がまだ十分に詰まっていません。殻が硬くなるにつれて、えさを食べて筋肉が増え、身が殻の中に詰まっていきます。そのため、同じ大きさのカニでも、脱皮からの時間が長い方が身入りがよい傾向にあります。
店頭で身の詰まったカニを選ぶときの目安は次のとおりです。
- 同じ大きさなら、持ったときに重い
- お腹側を指で押しても、へこまない
- 甲羅に傷や付着物が多く、時間がたった殻に見える
ただし、どれも目安で、確実に身入りを見分ける方法ではありません。通販では「堅ガニ」「身入り良好」などの説明があっても、基準は販売者ごとに違います。身入りの考え方はカニの「身入り」とは?で詳しく解説しています。
脱皮の季節とカニを買う時期
ズワイガニのオスが脱皮するのは主に9〜10月ごろです。その少し後、11月6日に日本海のズワイガニ漁が解禁されます。解禁直後の海には、脱皮から時間がたった殻の硬いカニと、その年に脱皮したばかりの殻のやわらかいカニの両方がいることになります。
殻のやわらかい水ガニは、資源を守るために漁獲が制限されている地域が多く、たとえば福井県では水がにの漁期を2月19日から3月20日に限っています。京都府の解説では、京都府の漁業者は2008年以降、自主規制で水ガニの漁獲をやめているとされています。そのため、漁期の前半に店頭に並ぶオスは、殻の硬いカニが中心です。
冬の終わりには、水ガニ(若松葉ガニ)が出回る地域があります。脚肉の身入りや贈答向けの姿を重視するなら殻の硬いカニ、手頃さと殻のむきやすさを優先するなら水ガニが候補です。漁期の仕組みはカニの解禁日と漁期の仕組みで紹介しています。
甲羅の黒いつぶつぶの正体
ズワイガニの甲羅に、黒くて硬い小さなつぶつぶがたくさん付いていることがあります。これはカニビルという生き物の卵とされるものです。カニの身を食べるものではなく、硬い殻を卵を産み付ける場所として使っているだけと考えられています。
脱皮すると古い殻と一緒につぶつぶも落ちるため、たくさん付いているカニは、脱皮してから時間がたっている可能性が高いと言われます。そこから「つぶつぶが多いカニは身入りがよい」と説明されることもあります。
ただし、カニビルの卵の付き方は、すんでいた場所にも左右されます。つぶつぶが少なくても身の詰まったカニはあり、多くても身入りが十分でないこともあります。目安の一つとして参考にする程度にしておくのがよいでしょう。気になる場合は、茹でる前にたわしでこすれば落とせます。
ソフトシェルクラブとは
脱皮直後の殻のやわらかいカニを、殻ごと食べられるように加工したものが「ソフトシェルクラブ」です。唐揚げやフライ、パスタなどで出されます。
日本の飲食店で出されるソフトシェルクラブは、多くが輸入品で、海外で脱皮直後の個体を集めて冷凍したものです。原料となる種類は商品によって異なるので、気になる場合は原材料の表示を確認してください。ズワイガニの水ガニとは、同じ「脱皮直後のカニ」でも、別の種類で別の食べ方のものです。
甲殻類のアレルギーがある人は、殻ごと食べるソフトシェルクラブも当然ながら避ける必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. カニは一生のうちに何回脱皮しますか?
A. 種類や個体によって違います。京都府の解説では、ズワイガニのメスは10回の脱皮で11齢期になり、その後は脱皮しないとされています。オスは10〜13齢のどこかで最終脱皮を迎えます。
Q2. 脱皮したばかりのカニは食べられますか?
A. 食べられます。ズワイガニでは水ガニ、若松葉ガニなどと呼ばれ、殻がやわらかく身に水分が多いのが特徴です。値段が手ごろで、殻をむきやすいという良さがあります。
Q3. カニの脱皮はどのくらい時間がかかりますか?
A. 殻を脱ぐ動作そのものは比較的短い時間で終わりますが、新しい殻が硬くなり、身が詰まるまでには数か月から1年ほどかかると考えられています。京都府の解説では、殻の硬いタテガニは最終脱皮から約1年以上たったものとされています。


